#34 僕の人生には事件が起きない

警備員も立派な仕事だ。友達が今、警備員の仕事をやっている。何が悪いのだ。僕は同級生のその友達が下に見られ、バカにされたような気がして許せなかった。

澤部へのオファーが増えたことによって、一方テレビに出ていない岩井は……というようなネガティブな注目を周りが僕に向けたがる。しかし澤部のテレビ出演が増えるのを見て、僕は「そりゃそうだろう」と思うのだった。（中略）なので、僕自身はあまり焦っていなかった。唯一、周りからの「岩井は大丈夫か？」といういかにも嘘っぽい心配が鬱陶しいだけであり、そんな一言をかけてくる奴は大抵、人が焦っている姿や、落胆している様子を見て、「自分は大丈夫だ」と思いたい小さい人間なのだ。売れていない先輩ほどその言葉をかけてくる傾向にあった。

澤部はもの凄く綺麗にラッピングされたプレゼントなのである。皆そのラッピングの綺麗さに感心し、まじまじと見る。しかし、そうしているうちに中身などどうでもよくなってしまい、誰も見ようとはしないのだ。