#68 いちご同盟

表紙

(三田誠広著、集英社文庫、1991年10月25日初版発行)

ぼくの顔を見ると、直美が嬉しそうに言った。この前と同じように、ダルマさんみたいな格好で、ベッドの上に座り込んでいる。

「でも、病気じゃない人には、わからないわね。あたしに与えられたリストは、病気、病気、病気、これだけ。自殺する権利もないのよ。だって、自殺したって、病気のせいだと思われるでしょ。自殺って、元気な人がやらないと、誰も驚かないものね」

「可能性がある人がうらやましい。自殺のことを考えるなんて、贅沢だわ」

運命が、あなたをあたしの前に連れてきたのよ。だからあたしは、この運命を、喜んで受け入れようと思うの

「いまおれは、哭いている。明日も哭く。明後日も哭くだろう。だが、半月後はどうだろうか。おれは、自信がもてない。そして半年たてば、高校に入って、野球のトレーニングが始まる。ファンの女の子がおれを囲む。甲子園に出られたら、おれはスターだ。誘惑も多いだろう。おれはいつか、誘惑に負ける。そんな予感がする」

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この記事を書いた人

2004年生まれ。大学3年生。好きな種目はディップス。2025年Shape Fit Festival Men's One Shape 3位。

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